2011年12月29日木曜日

BABY RECORDS' 2011 FAVES TOP 30

25日のヴィンセント・ラジオ『ザ・ラスト・ビア・ショウ』の番組内でも話したとおり、2011年のお気に入り盤のトップ30を発表するよ。トップ3だけを決めて、あとは順位に関係なくアルファベット順にならべたよ。タイトルのうしろのカッコ内は、自分が持っているフォーマット。それぞれに感想コメント、ジャケット(もしくはレーベル部分)写真をつけて、YouTubeで聴けるやつは貼っといたよ。
 動画をいっぱい貼ったため、重いページになっちゃったけど、おひまなときにでも読んでみてちょび髭。


☆第1位
FORD & LOPATIN "Channel Pressure" (LP)


 同じようなひとは多いようだけど、2011年は大震災からしばらくはまるで音楽を聴く気になれなかったね。夏になるころにはだいぶ気持ちを建てなおせていたけど、東電に余計な電気代を払うのがしゃくなのと冷房病予防を兼ねて、扇風機と空気清浄機とうちわだけで暑さをしのいでけっこうバテた。あと、じつは6月末からまる半年間、朝9時半から午後3時まで学校に通っていたんだけど、とくに前半の3か月は帰宅後も汗だくで猛勉したから、ノートが湿ってふやけて弱ったりして……。暑かったけどけっこう残る夏だった。学校通いのリズムもあって早寝早起きを徹底した年でもあったね。毎晩、風呂のまえにストレッチをLP1枚ぶんぐらいの時間やって体のコリをほぐすのがオレの日課というか習慣でさ。このアルバムはずばり真夏のヘヴィ・ローテイション。どハマりだった。フォード&ロウパティーン大活躍の年だったし、文句なしの第1位だよ。




☆第2位
FEIST "Metals" (CD)


 ファイストはとにかく大好きだからね。予告編の動画で気をもたせてくれたのもなかなかよかった。なんども聴いているうちに、気温の低下とともにしみてきたね。最初、ジャケのF型の木の枝にファイストがうつぶせになっているのに気がつかなかったな、そういえば。




☆第3位
JASON GRIER & NITE JEWEL "Heart Shaped EP" (12 inch)


 ナイト・ジュエルはこれまたみょうに馴染むんだよね。音のみならず、歌声もしっくりくる。これはLAのヒューマン・イアー・ミュージックのひと(つまりアリエル・ピンク一派)との共作盤。いつだったか、渋谷に向かうバスの車窓を眺めながらiPodで聴いて、「うわあ最高! たまんない!」と異様にぐっときた夏の夜があったんだよね。ところがいま聴いたら「あれ?」って感じで、そこまでとは思わなかったんだけどさ。あの晩の一時的な感動を尊重して第3位だ。



 ここからはアルファベット順だよ。

ASC "Leviathan" (12 inch)


 室内30℃以上で汗だくの夏だったから、へばりながらアンビエントっぽいもよく聴いたのさ。昔のジ・オーブとか、サンフランシスコのクワイエット・レコーズのコンピとか。90年代前半の細野晴臣さんがよくつかっていた「クワイエット・ヒップ」を、勝手にこの夏の自分のテーマにしたりして。その流れで90年代のドラムン・ベースもひっぱり出してよく聴いた。ジェイコブズ・オプティカル・ステアウェイとかね。だけど、最近のドラムン・ベースはまるでチェックしていなかったから、ネットでいろいろ探ってひっかかったのが、ASCの音数をしぼった端正ながらも色気のある作風。2011年だけでも10枚以上シングルを出しているうちの数枚を手に入れたなかで、エクジット・レコーズ盤のB面曲がとくにイカしていた。でもこれはいわゆるドラムン・ベースのパターンじゃないね。



THE BEACH BOYS "The SMiLE Sessions Box Set" (5CD+2LP+2 7inch)


 箱のふたの立体的なつくりがカッチョいい。電気が点く仕様の高いやつもあるんだよね。中身はいわずもがなでしょ。ここまでの紆余曲折もふくめて、ケチをつけるなんて野暮ってもんだ。ずいぶん遠いところにあった"SMiLE"が、すっかり身近な音楽として響くようになったもんだ。



BEAUTIFUL SWIMMERS feat. JOHN DAVIS / Open Shadow (7 inch)


 2009年のデビュー名曲'Swimmer's Groove'に匹敵するのは出るのかね?……なんて思っていたら、なかなか夏向きな今様AORでよろこばせてくれたオタク外見なおふたりだ。ちょっとネッド・ドヒニーが入った感じの曲調。風のある曇った日曜日の午後に、番組のラスト曲でかけて気分よかったんだよね。歌っているのはQ・アンド・ノット・Uのひとらしい。



JAMES BLAKE "James Blake" (2LP)


 各方面でバカうけした盤だね。若くていっぷう変わったダブステップ系のサウンド・プロデューサーだと思っていたら、ずいぶん歌も達者で最初はあっけにとられちゃった。さらに時流に乗っているようで、じゃっかん距離を置いていたんだけど、やっぱじわじわいいのよね。ファイストの曲をカヴァーしたのにも素直に拍手だね。



BORIS "New Album" (CD / 2LP)


 2、3年前に小林(弘幸)くん家で飲みながらいろいろ聴かせてもらっているときに、デカい音でボリスがかかったんだ。で、小林くんのおすすめ盤っていうのは、小林くんがかけるとカッコよさが伝わるんだけど、あえて自分で買って手に入れることはほとんどないんだよね。でもその感性のちがいが興味ぶかいところであり、楽しいわけさ。ところがどうだ、小林くんがディレクターで携わったボリスの新作ですよ。おそるおそる聴いたら、どえらいポップななかにばつぐんのサイケデリアが浮かび上がっていて、まいったね。傑作だ。



CHAIN & THE GANG "Music's Not For Everyone" (LP)


 先行7インチの'(I've Got) Previlege'のリリースは去年だったから、両面の曲が入っているLPを選んだよ。元ザ・メイクアップ〜ウィアード・ウォーなどなどのワシントン・DC産ガレージ・ソウルマン、イアン・スヴェノニアスのバンドの第2作だぜ。カルヴィン制作、ダブ・ナーコティック録音のまさにK印の音で、レイ・チャールズ&ザ・レイレッツをやっている感じがするんだな。'Detroit Music'は、DJで呼ばれたときによくかけるよ。ごきげんだよ。



クレイジーケンバンド "ワイルドでいこう!!!" (CDS)


 夏にCKBのアルバムが出ないなんて、ちょっと驚いたけどさ。パワーを蓄えて“にんにくの日(2月29日)”に出す新作に期待でしょ。ちょうどマチャアキがゲストで出たライヴ会場の中野サンプラザでこのCDシングルを買った足で、おでん屋6での小野田の結婚パーティのDJでかけたはずなんだけど、酔っぱらっていて記憶がないんだよね。でもまあ震災やら原発事故やらで祝祭的な場に身をおく気がおきなかった年に数すくない、めでたい出来ごとだったよ。



dBridge "So Lonely" (12 inch)


 ASCのシングルも選んだロンドンのエクジット・レコーズ製。漢字で「出口」とか書いてあって変なロゴなんだけど、2010年の'Love Hotel'って12インチにもむちゃくちゃ痺れたレーベル代表Dブリッヂのこれにもやられた! 憂いを帯びたなんとも怪しく薄暗い曲調なれど、妖しげなソウル心がどくどくと注入された世界に思いっきりハメられたね。コンシクエンスとザラーテのリミックスもそれぞれ成功で、1枚とおしてこりゃまたストレッチ・タイムに重宝したもんだ。



THE EDGAR JONES FREE PEACE THING "Stormy Weather" (2CD)


 じつは日本盤のライナーを書かせてもらったんだよ。ザ・ステアーズ時代から大好きなリヴァプールの粋人エドガー・ジョーンズ氏が組んだ、フリー・ピースという名のあたらしい3ピース・バンドの初アルバムなのだ。たまらなくイカすブリティッシュ・ハード・ブルーズ・ロックなんだねこれが。デカい音で効きが倍増するね。



FAR OUT MONSTER DISCO ORCHESTRA "Freefall - JOSE CARRETAS Remix" (12 inch)


 この12インチのシリーズは緑のと茶色いのも買って、いかにもファー・アウト・レコーディングズ産の気のきいたハウスだった。手に入れた3枚のなかでは、この青いやつのA面の生ベースラインが効いているミックスがスカッと爽快でじつにごきげんなのさ。



INC. "3" (12 inch)


 前はティーン・インクって名前でやっていた前髪の長い若者デュオが、4ADにいった一発めだね。エレクトロ・ポップとかフュージョンとかブラコンとか、オレが10代のころの感じがいろいろ入っているんだけど、その混ざりぐあいがどうも謎めいていて、カッチョいいんだね。



THE JET AGE OF TOMORROW "Journey To The 5th Echelon" (MP3)


 これは皿では出ていない無料配信アルバムだけど、ハードディスクも皿状記録媒体ってことで入れたよ。しかも2010年大みそかのリリースだから本来は対象外だけど、ぎりぎり大目にみて頂! 人気者集団OFWGKTAの作品中でも、夢宇宙な耳心地がばつぐんだ。



JOKER "The Vision" (CD)


 待ちに待ったちょうどいいところで、ドーンときたね。じょわーっとしたシンセの広がりがだいぶ増した気がするけど、期待を裏切らなかった。濡れたアスファルトにLED照明が反射した質感! オレ好みダブステップ出世頭の快作だよ。'Electric Sea'とか、インタルードの'Level 6'あたりがツボだよ。12インチ&無料配信で出たインスト集ももちろんグー。これも4ADだ。



加藤訓子 "Kuniko Plays Reich" (CD)


 土曜の朝にNHKのFMを聴いてうとうとしていたら流れてきて、こりゃあいいという話になったわけさ。ライヒとかいうと小むずかしいイメージもあるけど、フィジカルで気持ちよいんだねえ。加藤さんのことも初めて知ったけど、なんか凄いね。現代音楽を1枚入れておいたりするとインテリっぽい気分にもなるし、文句なしだ。



LIANNE LA HAVAS "Lost & Found" (10 inch)


 4曲入りのデビュー・EP。このところ風呂上がりなんかに毎晩1回は聴いているね。ファイスト以来かもと思わせる歌声なんだよねえ。ギターも達者だし曲も書けるしなかなか美人だし、今後に期待せざるをえない。しかし1989年生まれって、あなた……。2011年新人賞決定だよ。すばらしいスターに育ってほしいね。



L-WIZ "4.42 Oz" (12 inch)


 ダブステップのなかにソウル&ブラコン心を求めるオレに、まさにうってつけのB面曲'4.42 Oz'にやられたあ。↓のYouTube動画だと、1分31秒から始まるよ。L=ウィズは、2000年代半ばから活躍するスウェーデンの実力派コンビだ。



MINKS "By The Hedge" (CD)


 おいちゃんの年齢ともなると、こういうギター・バンドは懐かしいやら新鮮やらで、なんだか恥ずかしくなっちゃうこともしばしばだけどさ。ミンクスは最初の2枚の7インチからして別格な感じがして、アルバムもそのままいい曲ぞろいで、ついこないだ出た新曲7インチも素直に感心しちゃったわけさ。でもオレはおいちゃんだから、たまに聴いて、そのよさを確認する感じだったりもするんだよね。'Funeral Song'じたいは2010年製だけど最高だね。



NITE JEWEL "It Goes Through Your Head" (12 inch)


 ふたたびナイト・ジュエル。なんともやりきれない気持ちだった大震災直後の3月末の番組でかけたっけ。調子の出ないときに、ほどよく気分を上向きにしてくれた曲だね。少年時代に刷り込まれたタイプのアレンジだし、一瞬出てくるスミスっぽい節回しなんかが、やたらとしっくりきた要因なのかな。カップリング曲とデイム・ファンク、サンプスのリミックスもグー。



ONEOHTRIX POINT NEVER "Replica" (LP)


 第1位に輝いたフォード&ロウパティーンのロウパティーンのほうがやっている別プロジェクトなんだってね。シリアスな実験音楽の素養をふまえつつ、気ままに崩して快音遊びをしているようでオモロい盤だね。うまいぐらいにバランスをとってポップな範疇に収まっているから、じゃまにならないし飽きないし耳心地よいし、ふいに聴きたくなる。これもストレッチ・タイム向きだ。



JON PHONICS "The One" (7 inch)


 じつはジャイルズ選曲のコンピCD、"Brownswood Bubblers Seven"で知った曲なんだよね。うっかり見逃していたお皿だから、「ジャイルズさん、ありがとう」と伝えたい。いわば2008年からのブギー・ファンク流行りに乗っかったスタイルの、3分にも満たない7インチB面曲なんだけどさ。どうでもいい歌詞なんだけど、あたまの女性ヴォーカルが入る瞬間に毎度ぐっときちゃうのだからお手上げだ。



PYROLATOR "Neuland" (LP)


 下でアタ・タックのCD・コレクションのふた箱を選んでいるけど、ピロレイターことクルト・ダールケさんの24年ぶりソロ・アルバムが出ましたよ。1979年の『国内』に始まり、『外国』、『おとぎの国』、『夢の国』ときて、当初の計画どおり『あたらしい国』で完結。なにより今日的なダンス・ミュージックというのがうれしいし、ひとつひとつの音選びの冴えがあいかわらず凄い。ぜんたいの構成もきっちり。ぐわーっといっきに想像力を喚起するけど、けっしてぶっとんでいるわけじゃなく、エラそうでもなく、じっくり着実に作りあげている。さすがピロレイター品質。



SEAHAWKS "Another Summer With Seahawks" (7 INCH + CD)


 2010年にも増して多作だったシーホウクス。シングル・コンピ的CDもピクチャー盤のやつも最新LPも、オート・ヌ・ヴとの7インチもコス/メスのリミックスもお気に入りだけど、とくによく聴いたのは、AOR&ウェストコーストな50枚限定のミックス・CD-R"Hang Ten"と、この2枚組セットの7インチのほうなのだ。7インチ収録の'No More Raindrops (Version)'は、五本木のBALで永井博さんやトラックス・ボーイズとDJした、どしゃぶりの夏の夜にかけたっけ。そのままずばりの空模様とあいまって印象ぶかかったし、はやくも夏が恋しくなるね。


SLEEP ∞ OVER "Forever" (LP)


 あのパンツをはいていない女の子が飛び跳ねているジャケの7インチ'Outer Limits'ですっかりファンになったスリープ∞オーヴァーの初アルバム。うまいぐあいに、ぼわーんとした音楽でクセになるんだけど、よく聴くとメロじたいもなかなか魅力的なんだよね。なんかカッコよく謎めかせるっていうのが、近年のインディの傾向としてある気がするねえ。脱退したメンバーがやっている、ボーイ・フレンドのミックステープと7インチもよかったぞ。



砂原良徳 / "liminal" (CD+DVD)


 先に出たミニアルバムの"subliminal"が最高だったから超期待していたわけさ。でも、大震災後まもなく手に入れて最初はどうもしっくりこなかったりしたのは、オレが危うかったのか、この音楽が危ういのか。聴くたびに印象が定まらないくせに、テクノの真髄を突いていると思わせるんだよねえこれが。手ごわいアルバムだ。



VARIOUS ARTISTS "Ata Tak - The Collection Box 1 - Genesis/The Beginning" (5 CD)


 ついに始まった。完璧なディレクションでアタ・タックの名作群をまとめる大事業。光栄にもデア・プラン"Normalette Surprise"とロスト・グリンゴス"Nippon Samba + Troca Troca"のライナーを書かせてもらったのだ。



VARIOUS ARTISTS "Ata Tak - The Collection Box 2 - Experimental" (5 CD)


 2箱めは小柳カヲル氏の新レーベルから「でもやるんだよ!」とリリースされたのだ。ミーヌス・デルタTは、CDでいっきに聴くとまた趣がちがってすばらしいのだ。



VETIVER / The Errant Charm (LP)


 サブポップ入りしてから、ずいぶんとポップ度を増したヴェティヴァーだ。なんでしょうか、このほどよさは。だいぶ曲の輪郭がくっきりしてきたのに、変わらずふんわりと漂えるんだよね。ライヴもいちど観てみたい。




★おまけ!

 惜しくも30枚からハズれた次点扱いの盤も3枚ほど挙げちゃおう。

SOFT METALS "Soft Metals" (LP)


 最後の最後で落選しちゃったソフト・メタルズ。シンセの使いかたがじつに好みなんだよね。



SWEET EXORCIST "Retroactivity" (2CD)


 いままで12インチでちまちま聴いていた名作群に未発表音源をプラス。まとめて聴けちゃってごきげんな2枚組CDだ。今朝聴きながら掃除をしたら、とてもはかどったぞ。



TWIN SISTER "In Heaven" (LP)


 2010年の12インチでも同じことがあった。名曲'All Around And Away We Go'だけが飛びぬけて気に入ったものの、盤ぜんたいだとちょっと可憐すぎちゃって自分内ランクが落ちちゃうんだよねえ(けっきょくドミノが7インチ化して万歳)。で、こんどのアルバムも、A面2曲めの'Stop'が生グラウンド・ビートな完璧ポップ・ソングなのに、お皿単位で考えたら30枚からハズれてしまった。シングル・カットされていれば確実に入選しただけに、すこし悲しい結果となった。



 まあそんなわけで2011年を締めくくってみたよ。ではよいお年を!