2013年1月11日金曜日

BABY RECORDS' 2012 FAVES TOP 10 - Films

 年が明けてだいぶ経ったけど、年末に発表したお気に入り盤編につづいて、2012年のお気に入り映画トップ10だよ。さっそく発表しちゃおう。

☆第1位
ミッドナイト・イン・パリ



 最初に観たとき、めずらしく涙が出たんだよねえ。ちょうど精神的に弱っていたんだけどさ(笑)。もう1度観にいって、またじわっときたもんなあ。巧いよね。ロマンティックを極めていると思う。リヴァイヴァル上映されたブレッソン監督の『白夜』とあわせて、20年ぶりぐらいに自分のなかでフレンチ・テイストが盛り上がるきっかけにもなったよ。ようやく公開された『恋のロンドン狂騒曲』もばかばかしく可笑しい佳作だった。


☆第2位
果てなき路



 これにはどっぷり浸ったね。ただ、あえて謎めいた点が残してあるから、ぽんこつのオツムでは処理しきれないところもあってさ。2回めに観にいって自分なりに解釈はできたけど、まあ謎は謎のままでいいんだな。
 劇中にも出てくるキヤノンの写真用カメラ"EOS 5D Mark Ⅱ"の動画機能で全編を撮っちゃったというのにも驚いたね。2012年はフィルムからデジタルの移行のタイミングを反映した映画がやけに印象に残る年でもあった。『ヒューゴの不思議な発明 3D』とか『アーティスト』はもちろんのこと、そのものずばりの『サイド・バイ・サイド:フィルムからデジタルシネマへ』もあったし、平凡な映画ファンの自分ですらいろいろ考えちゃう。そんな過渡期を味方につけ、これだけの傑作を撮っちゃったヘルマンの御大はさすがなのだ。連動した『断絶 ニュープリント版』上映、インタビュー集刊行にひきつづき、今月下旬には『コックファイター』もスクリーンで観られちゃうし、今年もboidには足を向けて眠れないな。


☆第3位
ドライヴ



 「こりゃ若いひとにウケそうだなあ」なんて思いつつ、おいちゃんにとってもなかなか新鮮な1本だったのさ。レフン監督は学年でいえばひとつ下でさ、比較される年長のタランティーノと比べても、ぐっと同世代意識を感じさせるなんて勝手に思ってみたりもしてさ。変なところからひろってきた細かいネタが、唐突すぎたりさりげなさすぎたりで、ニヤりとしきれないところがまたみょうな心地よさでくせになる。あとシンセ音楽のハマりぐあいもちょっと凄い。DVDで出た『ブロンソン』じゃ、ニュー・オーダーの'Your Silent Face'もハマっていたっけ。『ヴァルハラ・ライジング』は、北欧産だけあってぜんたいにブラック・メタルが入っている気がするし。「光がいいな。壁紙の色もいいなあ」なんて色づかいにも感心していたら、監督ったら色覚障害だっていうんだから、たまげちゃったもんなあ。うまいぐあいにデジタル映画向きだし。


☆第4位
裏切りのサーカス



 こりゃまた話が込み入っていて、初回はオツムがついていかずに、目の前をぼんやりと流れていっちゃった。それなのに、やけにぐっときたんだよねえ。すぐに2回めを観て、原作本も買って読んでさ。役者がそろっているし、舞台は魅力的だし、苦くて地味なトーンがたまらないし。あと音楽のつかいかたもふるっている。ラストのフリオの'La Mer'(ネタバレシーンだ→ http://www.youtube.com/watch?v=idUjpNL53RE)が流れたときには、うわーっと軽く鳥肌っぽくなったね。スコアを担当したアルベルト・イグレシアスは血縁ってわけじゃないらしいけどさ。ともあれ、人生の黄昏どきを日々感じる独り者の中年にはなかなか染みる映画だね。


☆第5位
プロメテウス 3D



 期待しすぎないよう抑えぎみに臨んだら、とんだ杞憂。探検隊は変なやつばっかりだし、びっくりじかけは満載だし、見どころだらけでしょ。3D効果もたいしたもので、ひたすら目が釘づけ。たしかになんだこりゃって話ではあるけど、理屈ぬきでオモシロかったもんな。そういえば、船長がなぜかスティーヴン・スティルズのちっちゃいアコーディオンを持っていたっけ。


☆6位
007 スカイフォール



 「どうしてここ3作の辛気くさい007がオモシロいのか?」と考えるんだけど、やはり自分が中年になったからだと思うんだ。苦境にあえぐ同年代のボンド。ダニエル・クレイグは学年でいえばひとつ上だし、焼きがまわって射撃の的をはずしちゃうし、おのずと応援しちゃうもんな。むろん国際的諜報員とオレとじゃ、なにからなにまで大ちがいなのはわかっていますよ、そりゃ。


☆第7位
演劇1/演劇2



 合計5時間42分があっという間だったんだよねえ。演劇音痴だから平田オリザ氏と青年団のこともろくに知らなかったのにさ。『選挙』『精神』『Peace ピース』(橋本さん、安らかに……)ときてこの2本でしょ。想田観察映画は挑戦的でするどいだけじゃなく、心が通っている感じがするよ。ナレイション/音楽/字幕なしで物語るわけだから、編集はむずかしいはずだけど、間のつくりかたも絶妙だと思う。さりげなく切りとられた駒場の風景なんて、なんともいえぬ心地よさで、井の頭沿線を離れたことをちょっと後悔したほどだよ。
 そんな想田監督の姿勢と対照的なのが、『駄作の中にだけ俺がいる』(2012年トホホ映画首位)だね。テレビ畑のドキュメンタリー制作者が、規格外の取材対象を従来の仕事の枠組み内できれいにまとめようとしたところで、うまくいくはずもなし。高尚にみせたい気どりがばればれだし、とってつけたような音楽のつかいかた(あのシーンに「ジムノペディ」って……)にげんなり。最高の題材に恵まれたとしても、向き合いかたひとつでああも凡庸になっちゃう。しかも『≒会田誠 ~無気力大陸~』という雑然とすぐれた先例があるにもかかわらず。ああもったいない……って、だいぶ話が逸れちゃった。デジタル機材の進化によるドキュメンタリー映画の量産は、『果てなき路』のところで出た話題にもつながるね。


☆第8位
強奪のトライアングル



 新宿武蔵野館の『3つの刺激・感 ニュー香港ノワール・フェス』の3本でだんとつだったね。ツイ・ハーク→リンゴ・ラム→ジョニー・トーと、3人の監督が30分ずつ受け持ったのをくっつけるという企画ものでさ。財宝をめぐるとんま男3人のどたばたを描く、タッチの変化と話の転がりぐあいをにやにやと楽しめた。ひょうひょうとした感じがよかったな。


☆第9位
スケッチ・オブ・ミャーク



 邦画ドキュメンターがもう1本入った。題材は、もはや風前の灯火になっちゃっている宮古諸島の音楽、アーグと神歌。久保田麻琴さんが出した“南嶋シリーズ”のCDと、ブルー・アジアでのリミックス盤『スケッチ・オブ・ミャーク』の映画版といえるものだね。久保田さんと大西監督の水先案内で、とにかくもの凄いところまで連れていってもらっちゃった。宮古をふらりと観光で訪れたところで体験できるたぐいのもんじゃあないし。もっともオレなんてレコードの旅ばかりで、リゾート地と呼べる場所にいったことすらないけどさ。帰りに売店でリミックス盤だけを買ったのはおさいふの問題もあるんだけど、現地そのものの音源が自分の都会寄りの暮らしぶりに馴染まないという理由も大きい。口伝えの民謡が失われる問題と地つづきだけに、ちょっと哀しい気分になったりしてさ。


☆第10位
メランコリア



 9位まではすんなり選べたのに、この10位はなかなか決まらなくてさ。候補を並べるなかでちょこっとだけ頭が出ていた『メランコリア』にしたよ。みみっちい人間の話にずいぶんと大風呂敷を広げて可笑しかったし、「トリアーがどんな変なのを撮ったかな?」という期待にも応えてもらったしさ。そういや、デンマーク出身の監督の映画が2本入ったね。



 ……とまあ、こんなところだよ。iCalの記録によれば、2012年劇場のスクリーンで観た映画はぜんぶで84本、年明けに追加で年末公開ものを4本(DVDで観たぶんは記しておらず不明)。洋画の新作が中心だけど、リヴァイヴァル上映にもそこそこ通って、梅雨どきにシアター・イメージフォーラムでやったジョン・カサヴェテス特集あたりはとくに印象ぶかいね。まだ上映中のファスビンダーの3本もうれしかった。
 もちろん観逃したものも多くて、「テレビ用に製作された映画だし、DVDでいいか」なんて理由で、『カルロス』3部作を見送ったのは失敗(今月下旬に下高井戸シネマで観よう)。名画座やオフシアターの細かいスケジュールをけっこう見落としちゃうのもなんとかしたいところ。

 オモシロいのもつまんないものひっくるめて、暗闇でスクリーンを見つめている時間はかけがえのないものだから、今年もいろいろ観ようと思っているわけさ。