最近のプリンスのもみあげなし小盛りアフロ・ヘアはなんか可愛い。3人娘サードアイガールを従えてちょっぴり若がえった気もする。ダウンロード版のみは歯がゆいが、ひさびさに満ち足りた気持ちにさせてくれるシングル曲。5つのヴァージョンどれもがクールで、朝食にちなんだ各ミックス名もよし。ヴィデオのエロっぽいファンタジーも好み。そろそろアルバムと来日公演をお願いしたいなあ。ちなみにジャケで『パープル・レイン』期の扮装をしているのは、コメディ専門局コメディ・セントラルの番組 "Chapelle's Show" で物まねネタ 'True Hollywood Stories: Prince' がうけた人気コメディアン、デイヴ・シャペールだよ。
QUADRON / Avalanche (LP)
ジャケを見た瞬間、ヴィクター・ラズロとリンダ・ディ・フランコを連想したのは内緒だぜ(笑)。たしかにぽんこつの脳みそだが、当たらずといえど遠からずじゃないかな。片われロビン・ブラウンの別プロジェクト、ライのヒット作 "Woman" は上品すぎてどうもひっかかりが弱くてさ。いちいち古いたとえで申し訳ないが、バーシアな清涼感、爽快感のあるクアドロンのほうを断然気にいったってわけさ。この際、ロビンにはもっと六本木ウェイヴ in 80's的プロダクションのヴァリエイションを聴かせていただきたい!
SILKIE / The Lost Tapes Vol.1 (2×12 inch)
あいも変わらずソウル心にファンク心、ブラコン心にAOR心をダブステップにも求めているが、昨年チャートにおけるスウィンドル 'If I Was Super Hero' やジミー・エドガー 'Switch Switch' に匹敵するお皿にはとうとうめぐり会えなかった……。でもでもその代わりジャズる心を満たしてくれたのが、シルキーの2枚組12インチB面収録のずばり 'Jazz Dub'。じつは2008年にインターネット配信のみで 'Jazz Dubstep' なる曲を出していることも判明し、その名どおりシルクの似合う夜ジャズ男として、すっかり見直しちゃったのだ。
やはり凄い。古いデモ音源を解凍蘇生した前作"Let's Change The World With Music"(2009年)の音のちゃちさに猛烈なもどかしさを覚えた大ファンとしては、題名の色彩そのままの健やかな血色よさに胸をなでおろした。実感するのは、くり返すほどに頭に残り口ずさめちゃうメロディの強度。その思いをさらに強めたのは、合衆国のスプラウトマニアがパディ・マクアルーン様式を踏襲するトリビュート・バンド、スプラウトレスのアルバム"Insights From Retrospect"と"Moveable Feast"(ファンサイトのザ・プリファブ・スプラウト・プロジェクトで購入可)。むろん同好の士としての共感はあれど、器用に真似るほどに本家本元の凄さこそが鬼気迫っちゃうのだから残酷だ。そういえばこないだいったカラオケ屋に'Cruel'があったっけ。ひとりでこっそり歌いにいこうかな。
ザ・ステップキッズも第3位に選び、あいかわらずヒット率高いストーンズ・スロウ・レコーズ。なかでもジェイムズ・パンツが発見したという、デズモンド・ピアスなる英国宅録人のちょいゴスな夢サイケデリアにはハッとさせられた。安堵感と昂揚感がいり交じってずーんと胸に響く第1曲 'Love You To Death' イントロの説得力で、いっきにひきこまれちゃうもんなあ。ところがウェブ検索では「60年代にキャリアを開始」だとか「ネットコンピューティングの学位を持つ大学院生」だとか、ピアス氏の実体がどうにも見えてこない。「じつはパンツ本人じゃないのー?」なんて疑っちゃったりもしてさ。アルバム25枚ぶんの音源から選曲したというのに、わずか8曲入りなのも不自然だし。ともあれ内容は最高。
再発盤/発掘音源盤の年間チャート上位に必ずひとつは送り込む名門ヌメロ・グループがわざわざ流通する自主制作の新譜なのだから、当然気になりYouTubeで聴いてみりゃ、なんとゆったりとした心地よさ。シカゴ在住レコード・コレクター/プロデューサー、ダンテ・カルファーニャによるソロ・プロジェクトのアルバム第2作なのさ。よりヒップ・ホップ寄りだった2003年の前作が高く評価されたらしいけど、寡聞にして知らなかった……。どこか人間味のにじむアブストラクト感がじつにしっくりくる、安息のインストゥルメンタル・レコードだ。ターンテーブル・ラブのブログ内インタヴューのお気にいりLP5枚には、ネッド・ドヒニーの "Prone"(1978年)やウィーの "You Can Fly On My Aeroplane"(1977年)も選盤。なんかお友達になれそうだ。
灰野敬二 (EXPERIMENTAL MIXTURE) / In The World (3CD)
これまた我ながら意外。なんたって4月のブログ記事の浅川マキ同様、アングラかつモノクロームすぎるイメージから敬遠しがちだった大ベテラン。その距離がいっきに縮まった気がする、“DJ”灰野敬二の新境地なのだ。CDJ4台とリズムマシン2台をあやつり、古今東西種々雑多な音楽を「実験的混合」。3枚組の各盤に "In Your Ears"、"In Your Minds"、"In Your Spirits" と名づけ、深部へと反応部位を移行させる計2時間半にわたる音盤&ビーツの冒険旅行。奏で編集される音盤の趣味のよさと幅広さに、長年レコード屋で買い集め愛好してきた氏の姿が浮かび、畏れ多くも親しみすら覚えちゃうもんな。
白髪の分量も増えYMO世代との仕事もへてすっかり貫禄づいた印象があるから、もっと渋い線でいくのかと想いきや、なんと多彩でリズミックな! あのエクセントリック青年がまっすぐ年を重ねた、天然の堀江くんがそこにいた。なかでも第3曲 'The Boy Of Clown' のソウル様式とポップ感覚の鮮やかな折衷ぐあいは、他に類をみぬまさに独擅場。グレイト3の2002年曲「極限高地の蛇」でも聴ける、デイヴィッド・ボウイ 'Sound And Vision' 直系の折り重なるストリングス・シンセ技は、近ごろのマイブームとみた。軽妙でいて深い。曲それぞれがしっかり心に余韻を残すところはさすが。