2013年12月28日土曜日

BABY RECORDS' 2013 FAVES TOP 30 - Part 1

 さて年の瀬恒例、お気にいり盤の年間トップ30(2013年版)を発表するよ。
  いつもどおりトップ3だけを決めて、あとはアルファベット順。タイトルうしろのカッコ内は所有しているフォーマット。それぞれに感想コメント、ジャケット(もしくはレーベル部分)写真をつけ、YouTubeやSoundCloudで聴けるものは貼っといたぞ。
  ページが重くなるので記事をふたつに分けた前編、パート1からいってみよう。おひまなときにでもひやかして頂戴。


 ☆第1位
PREFAB SPROUT / Crimson/Red (LP+CD) 

 やはり凄い。古いデモ音源を解凍蘇生した前作"Let's Change The World With Music"(2009年)の音のちゃちさに猛烈なもどかしさを覚えた大ファンとしては、題名の色彩そのままの健やかな血色よさに胸をなでおろした。実感するのは、くり返すほどに頭に残り口ずさめちゃうメロディの強度。その思いをさらに強めたのは、合衆国のスプラウトマニアがパディ・マクアルーン様式を踏襲するトリビュート・バンド、スプラウトレスのアルバム"Insights From Retrospect"と"Moveable Feast"(ファンサイトのザ・プリファブ・スプラウト・プロジェクトで購入可)。むろん同好の士としての共感はあれど、器用に真似るほどに本家本元の凄さこそが鬼気迫っちゃうのだから残酷だ。そういえばこないだいったカラオケ屋に'Cruel'があったっけ。ひとりでこっそり歌いにいこうかな。
 


 ☆第2位
SOGGY CHEERIOS / 1959 (CD)

  我ながら意外な第2位は、鈴木惣一朗&直枝政広の1959年生まれデュオ初アルバム。惣一朗さんは本人のことも知っているけど、直枝氏の音楽とは縁がなくて、カーネーションもデビュー・シングル「夜の煙突」(1984年)とデビュー・アルバム"Young Wise Men"(1988年)しかリアルタイムで聴いてこなかった。ところがこの夏、YouTubeのリリース予告編映像がやけに心にひっかかり、秋が深まるころに再度観たらやたらぐっときて、すぐさま渋谷のタワーレコードへ。同級生の放課後活動っぽい曇天夕闇感がたまらなく胸を打つ、日本語ロックの新しい古典にして定番でしょ。ネット通販で手に入れたライヴ盤 "2013.9.29 Osaka" のでこぼこコンビぶりも愉し。あきらかに化学反応起きているね。
 


 ☆第3位
THE STEPKIDS / The Lottery (12 inch) 

 今年のベスト・シングル。YouTubeのコメント欄にある"Steely Dan's Step kids..."ってのはいい得て妙。ふいに頭のなかでイントロが流れだして、むしょうに聴きたくなるんだな。で、じっさい耳にすると、ほんのちょっとアレンジが野暮ったく思えたりもして。でもそのハズしぐあいこそがザ・ステップキッズのマニアックな個性でさ。アルバム単位でまとめて聴くと、ナードっぽさばかりが気になっちゃうから、自分にとってはあくまでシングル向きのバンドかな。2011年の12インチB面曲'La La'以来の愛聴曲。ダウンロード発売のみだけど、ダフト・パンクとティンバーレイクの2曲をジャズった企画もの"Live Covers"もふるっていた。
   


ここからはアルファベット順だよ。

 CLUEKID / Dolphine (12 inch) 

 瑞々しきアンビエントじたてがたまらない海洋ダブステップの裏名曲。じつをいえば 'Sueño Latino' とか 'Pacific State' とか想い出しちゃってさ。この手のイルカ(not フォーク歌手)な感じは、いつまでたっても大好物なんだな。
 


 CROW44 / Crow 44 (LP) 

 ザ・ステップキッズも第3位に選び、あいかわらずヒット率高いストーンズ・スロウ・レコーズ。なかでもジェイムズ・パンツが発見したという、デズモンド・ピアスなる英国宅録人のちょいゴスな夢サイケデリアにはハッとさせられた。安堵感と昂揚感がいり交じってずーんと胸に響く第1曲 'Love You To Death' イントロの説得力で、いっきにひきこまれちゃうもんなあ。ところがウェブ検索では「60年代にキャリアを開始」だとか「ネットコンピューティングの学位を持つ大学院生」だとか、ピアス氏の実体がどうにも見えてこない。「じつはパンツ本人じゃないのー?」なんて疑っちゃったりもしてさ。アルバム25枚ぶんの音源から選曲したというのに、わずか8曲入りなのも不自然だし。ともあれ内容は最高。
 


 DAFT PUNK / Random Access Memories (2LP)

  最初にYouTubeで 'Get Lucky' を聴いて、「へえ、ファレルと組んだんだ」程度の関心度しかなかった大ヒット・アルバム。ところがところが、6月下旬のある晩に近所のホームセンターの前を通りかかったときの話。茶髪のヤンキー娘が自転車のタイヤに空気を入れているバックで 、店頭のしょぼいスピーカーから 'Get Lucky' が低く流れていて、その光景になぜか「わかった!」と思っちゃったわけなのさ。ちょうど空気もゆるんで、薄手のパーカーに風が心地よい宵の口だった。ジョルジオ御大の敬愛ぶりも含め、ほどよくメロウでなんとなくELOなすばらしきディスコ・レコードです。
 


 DARKSIDE / Psychic (CD)

  鬼才とうたわれる片われニコラス・ジャーの音源はとくに追っていなかったが、ギター弾きのデイヴ・ハリントンと組んだとたんにぐっときた。8月末にYouTubeで知った先行公開曲 'Golden Arrow' の変態音沼の深みとバレアリックな抜けの危うくも絶妙なバランス感覚にやられて、すぐに2011年のデビュー・10インチも入手してさ。バンド名の印象にひっぱられつつ、フロイド『狂気』が頭をよぎるコンセプト盤的な構成にどっぷり。月の裏で鈍く妖しく発光する、幻惑のフル・アルバム。
 


 DIANA / Perpetual Surrender (LP) 

 ナイト・ジュエルが標榜するAOR&Bのカナダ版って感じの、いかにも時流に乗ったレコード。もはやけっして新しいスタイルじゃないからこそのMORな中庸ぐあいが、かえって快くヘヴィ・ローテイション。たとえば、流行にあわせて音をころころ変えるヒット職人が、ちょうどうまいところを突いちゃった名盤。じっさいのダイアナの活動姿勢はともあれ、ああいうライト・プレイス・ライト・タイムな感触の2013年代表だね。タイトル曲にサックス・ソロが入る感じがまたいいんだ。むろんiPhoneのプレイヤーにも常備。いつもの止まり木、中目黒のチリタ帰りの電車内、ぼんやり酔った頭で目を閉じて、いくたび聴くでもなく聴き流したことか。
 


 DJ EARL / Blue Summer EP (12 inch) 

 はっきりいって、おいちゃんの年齢になるとジューク/フットワークのスピードに心臓がついていけません! それでも40歳を越えるトラックスマン作品のソウル心に反応したり、横浜発ペイズリー・パークス作 'So High' のサザンな情感に惹かれたりと、微妙に気にしてもいるどっちつかずのお年ごろ。そんなひき裂かれぎみのハートのひび割れを、ふいに通りぬけた一陣のBREEZE……。タイトルとジャケにつられて手にとった夏向きライト級の4曲入り12インチが、今年もかろうじてシカゴのゲットーに心をつなぎとめてくれたとさ。


 EXPRESS RISING / Express Rising (LP) 

 再発盤/発掘音源盤の年間チャート上位に必ずひとつは送り込む名門ヌメロ・グループがわざわざ流通する自主制作の新譜なのだから、当然気になりYouTubeで聴いてみりゃ、なんとゆったりとした心地よさ。シカゴ在住レコード・コレクター/プロデューサー、ダンテ・カルファーニャによるソロ・プロジェクトのアルバム第2作なのさ。よりヒップ・ホップ寄りだった2003年の前作が高く評価されたらしいけど、寡聞にして知らなかった……。どこか人間味のにじむアブストラクト感がじつにしっくりくる、安息のインストゥルメンタル・レコードだ。ターンテーブル・ラブのブログ内インタヴューのお気にいりLP5枚には、ネッド・ドヒニーの "Prone"(1978年)やウィーの "You Can Fly On My Aeroplane"(1977年)も選盤。なんかお友達になれそうだ。
 


 灰野敬二 (EXPERIMENTAL MIXTURE) / In The World (3CD) 

 これまた我ながら意外。なんたって4月のブログ記事の浅川マキ同様、アングラかつモノクロームすぎるイメージから敬遠しがちだった大ベテラン。その距離がいっきに縮まった気がする、“DJ”灰野敬二の新境地なのだ。CDJ4台とリズムマシン2台をあやつり、古今東西種々雑多な音楽を「実験的混合」。3枚組の各盤に "In Your Ears"、"In Your Minds"、"In Your Spirits" と名づけ、深部へと反応部位を移行させる計2時間半にわたる音盤&ビーツの冒険旅行。奏で編集される音盤の趣味のよさと幅広さに、長年レコード屋で買い集め愛好してきた氏の姿が浮かび、畏れ多くも親しみすら覚えちゃうもんな。


 HAIR STYLISTICS / Dynamic Hate (CD) 

 発売直後に手にいれ就寝前にかけてみたら、なんだかもぞもぞと落ちつかぬまま、部屋で聴くタイミングをつかめなかったこと約2ヶ月……中原氏が立ち寄ったという翌日に中目黒のチリドッグ屋チリタのBGMでかかってワオ。強烈な日光にくすんだTシャツの色あいというか、輸入VHSで観るエクスプロイテイション映画というか……一貫して不敵にたゆむアナログな味わいはそのままキープ。重心低めのイカした新鮮ビックリ・ビートがくり出され、鎮座ドープネスのラップも相性ばつぐん。目下、名盤 "Costom Cock Confused Death"(2004年)以来のリピート状態なのだ。つい先日Soundcloudにアップされた新曲 'Nagasaki Today (MIx 1)' にもシビれたぞ。
 


堀江博久 / At Grand Gallery (LP) 

 白髪の分量も増えYMO世代との仕事もへてすっかり貫禄づいた印象があるから、もっと渋い線でいくのかと想いきや、なんと多彩でリズミックな!  あのエクセントリック青年がまっすぐ年を重ねた、天然の堀江くんがそこにいた。なかでも第3曲 'The Boy Of Clown' のソウル様式とポップ感覚の鮮やかな折衷ぐあいは、他に類をみぬまさに独擅場。グレイト3の2002年曲「極限高地の蛇」でも聴ける、デイヴィッド・ボウイ 'Sound And Vision' 直系の折り重なるストリングス・シンセ技は、近ごろのマイブームとみた。軽妙でいて深い。曲それぞれがしっかり心に余韻を残すところはさすが。


 IKEBANA / When You Arrive There (CD) 

 ツイッターのタイムラインで友人が「ゆうれいザー」とカテゴライズしていて、うまいこというなと笑っちゃったけどさ。それほどまでに幽玄さが板についているんだな。6月半ばのリリースからしばらくは昼夜を問わず部屋を漂っていて、まさに浮遊の夏って感じ。ブレンディでつくった氷入りカフェオレとか飲みながら、よく浸ったものです。8月あたまに世田谷区代沢の教会で観たライヴなんか、夕暮れどきの冷房のきいた会堂のアンビエンスもあいまって、ちょっとうたた寝しちゃったり。生花のふたりの場合、演奏中のたたずまいと打ち上げのおしゃべりの落差がまたいいんだな(笑)。
 


 INC. / No World (LP) 

 きちんと期待に応えた初アルバム。ナイト・ジュエルと並ぶ、AOR&B不動の最高峰でしょ。ますますスノビッシュかつスタイリッシュ。全編をあえて抑えたトーンで統一したところにも、磨きぬいた美意識への自負心がうかがえる。ジャケのグルーミーな曇り空そのままの、空漠としたソフトネスとメロウネス。政情危うい不穏な時代ならではのスロウ・ジャムって気もするな。
 



 ☆パート2(後編)→BABY RECORDS' 2013 FAVES TOP 30 - Part 2 につづく。