2014年1月3日金曜日

BABY RECORDS' 2013 FAVES TOP 10 - Reissue and Unreleased

 お気にいり盤パート1パート2にひきつづき、“再発盤&発掘音源盤”の年間トップ10。2013年は新譜と中古盤にかまけた自覚があったけど、ふたを開ければかなりの充実ぶりだぞ。


 ☆第1位
VARIOUS ARTISTS / Purple Snow: Forecasting The Minneapolis Sound (4LP w/ Hardbound Book box)  

紫の雨が世界じゅうに降りそそぐ前の黎明期ミネアポリス・サウンドといえば、殿下が組んでいた94イーストの発掘盤 "Minneapolis Genius - The Historic 1977 Recordings"(1985年)にしか触れていなかった。そんな万年勉強不足の耳に、年末ぎりぎりでどどーっとなだれこんできた特大特集。さすがはヌメロ・グループとしかいいようのない、コンピレイション・LP4枚と貴重写真満載のハードカヴァー歴史本の豪華大箱だ。まだざっとしか聴けず、ぱらぱらとしかページを繰れていないけれど、プリンスが、ジャム&ルイスが、アレクサンダー・オニールが……映画『パープル・レイン』のごとく切磋琢磨した当時のシーンのわさわさした熱気がぐわーっと伝わる快演/好ショット勢ぞろい。先行でここから3枚の7インチもカットされた模様。モダーンな都会派ファンクをきめるフライト・タイムのPファンクばりなルックスとか、なんともいい味でしょ。問答無用の首位獲得。
 


 ☆第2位
CHARI CHARI / Snaker 002 (LP)

2013年エキゾティカ皿大賞は、井上薫さんのチャリ・チャリ名義お蔵出し音源(1996年~2001年)集。いきなりA面頭の曲名が 'Tiki' だもん。とはいえそこはあらゆる南洋音楽に造詣のふかい薫さんのこと、ティキ文化圏内趣味人にはけっしてかもし出せぬ音探究の粋と奥ゆきがある。テープやハードディスクに眠っている才人の未発表音源を「ライブラリー・ミュージックの現代版」としてアナログ・LPに蘇生パッケージする、"Snaker" シリーズのコンセプトにも一本とられた!




☆第3位
EVERYTHING BUT THE GIRL / The Language Of Life (2CD) 

2012年から始まったEBTGのオリジナル・アルバムの2枚組拡大版再発シリーズ。今年出た90年代前半ぶんの3種類を代表して、コンサーバティヴなAOR様式に大接近した合衆国録音の第5作(1990年)が第3位だ。リリース当時は大好きな前作"Idlewild"(1988年)との質感のギャップに軽くうろたえたりもしたが、いま思えば1994年ごろから自分がAOR狂になっていく伏線のひとつといえる。ベン&トレイシーが直接関わるこのシリーズの目玉はやはり初公開ホーム・デモ音源の数々。シンセとドラムマシーンで用意された'Driving'の原型なんて、まさに「これが聴きたかった!」ファン待望もの。トミー・リピューマのプロダクションとスタジオ・ミュージシャンの技で、いかにイメージに近づき豊かにふくらんでいったかの比較ができる。もちろん各種リミックスにシングルB面曲、1990年10月のライヴ音源収録でぬかりなし。EBTGのアルバムで唯一しっくりこない"Worldwide"(1991年)も、12月の夕暮れどきにかけたら気分にハマる瞬間があり、聴きなおすよい機会になったし、ベンの闘病をへた会心作"Amplified Heart"(1994年)の鬼凄さはいうまでもなし。はたして今年はドラム&ベースとハウスな後期2作も出るのかな。
 


  ここからはアルファベット順だよ。

THE CULT / Electric Peace (2LP)

 真夏に小林(弘幸)くんからの電話で知った、お蔵入りサード・アルバム "Peace"(1986年)の初アナログ盤化。題名からして対になるはずだった "Love"(1985年)期サイケデリアのなごり漂う "Electric"(1987年)収録曲のプロトタイプが聴けちゃうわけで、我々ファンの間では大人気の音源なのだ。しかも今回は聴きくらべを前提とした "Electric" との2枚組セット仕様。ザ・カルト出世の立役者スティーヴ・ブラウンとの蜜月をご破算にし、リック・ルービンと組んで未知なる荒野へ暴走する過程をごきげんに検証できる好企画だもんね。"Peace" の5曲が聴けるCDEP "The Manor Sessions"(1988年)は持っていたが、全貌を含む限定7枚組CD箱 "Rare Cult"(2000年)の買い逃しを悔やんでいたから、じつにうれしい音源入手でもあった。

 'Love Removal Machine' from "Peace"
'Love Removal Machine' from "Electric"


 WINSTON EDWARDS / Natty Locks Dub (LP)

  2012年の年間チャートでもセシル・ロイド "A Night In Jamaica" や次点のルイーザ・マーク "Breakout" を挙げたように、オリジナル盤探しにまで手がまわらぬレゲエ門外漢にとっては再発盤こそが頼みの綱。2013年もひじょーにお世話になった。なかでもジョー・ギブズの従弟というレコード屋店主が渡英して自主レーベルから出した1974年ダブ皿の心地よさときたら! とくにA面第2曲 'Big Daddy Amin'(←食人大統領のことかな?)と第4曲 'Soul Fire Dub' の生ぬるジャジーな湯加減は格別。冷房ぎらいにつき扇風機とサーキュレイターの2台で乗りきった蒸し暑〜いお部屋と完璧なる調和をとった1枚さ。
 


 STEPHEN ENCINAS / Disco Illusion (12 inch)

  1979年のオリジナル盤がeBayで1,775弗也……9月のある日、たまたま覗いたフェイスブックのタイムラインで知ってたまげた妖し珍しディスコ皿。試しにYouTubeで聴いてみりゃ、「♪ぴろぴろぴろぴろぴろぴろぴろぴろぴろぴろぴろりろり~っ」。思わずくねくねと動きたくなるブレイクの笛系シンセに惹かれ、何度もくり返したものさ。異国情緒を混ぜこんだ西欧諸国どマイナーものかと思いきや、トリニダード・トバゴ産というから2度びっくり。そんな高嶺の花をジャケつきで正規再発してくれたのが、トロントのインヴィジブル・シティ・エディションズ。主宰のDJデュオ、インヴィジブル・シティは12月上旬に来日して、東京ではイーネの千田くんのパーティ、ダンサホリックに登場したようだ。
 


 ROBBIE M / Let's Groove (LP)

  いまだ発掘の泉は枯れる気配なしのPPU(ピープルズ・ポテンシャル・アンリミテッド)。たいこ腹もおかまいなしで金ジャケットをはだけるモダ〜ン・シンセ・ソウル男、ロビー・Mの秘蔵音源集がまた凄かった。クレジットがなく特定はできないが、おそらく80年代末前後の録音。イリノイ州ロック・アイランドというローカルで奏でられる精いっぱいにアーバンな響きが、越して1年半で早くも郊外暮らしをギヴ・アップしそうな心の疼きに、甘くせつなく寄り添ってくれるんだわさ。
 


 THE PALE FOUNTAINS / Something On My Mind (LP+CD)

  かれこれ14年ほど前に渋谷ハイファイ・レコード・ストアのウェブ季刊誌に寄せた記事でもまっさきに挙げたっけ。ベルギー盤のオリジナル3曲入り12インチ(1982年)はどうにもこうにも人類史上最高なわけですが、同じくレ・ディスク・デュ・クレプスキュールで編まれたコンピレイションが、ブノア・エンヌベール先生作のこのジャケで新譜レコード屋の店頭を飾るっつーのがまたうれしいでしょ。おそらくLTM・レコーディングズ主宰のファクトリー/クレプスキュール狂ジェイムズ・ナイスが深く関わったと想われる、気のきいた再発ディレクション。目玉は1982年10月のクレプスキュール主催短期パッケージ巡業、ムーヴ・バック=バイト・ハーダー・トゥアー(共演はキャバレ・ヴォルテール、タクシードムーン、23スキドゥー、アンテナ)における実況録音。この巡業の音源は最近2枚組のCD拡大版仕様で再発されたアンテナの "Camino Del Sol"(1982年)にも収録され、国内流通盤のライナーノーツを書かせてもらった。そこにミカドの "Par Hasard"ボーダー・ボーイズの "Tribute" をくわえた同時期のクレプスキュール盤4枚(プラス、ベン・ワット 'Some Things Don't Matter' の7インチ)は、我が10代の最重要音楽体験といってよいんじゃないかな。
 


 V.A. / Americana 2 - Rock Your Soul (2LP+CD)

  年間チャート新譜編のエヂ・モッタのところでも触れたけど、AOR=アダルト・オリエンテッド・ロックというカテゴライズは海外でもだいぶ通じるようになったみたい。英国人マニアふたり(片われのザフはソーホーのレックレス・レコーズの元店員だって)が編集する BBE発シリーズ第2弾の副々題も "More Blue Eyed Soul & A.O.R. Sounds from The Land Of the Free" だもん。アーチー・ジェイムズ・キャヴァナーマッキー・フェアリー・バンドスティーヴ・イートンジェイ・P・モーガンなんて知られたところを含みつつ、英国流のレア・グルーヴ気質で掘りさげた合衆国産が16曲。日本的AORマニアと微妙にすれちがう傾向のずれが楽しいし、新鮮な発見盛りだくさんのスグレものだ。アナログ盤と同内容のCDがおまけにつく仕様もありがたや。
 


 V.A. / Ata Tak - The Collection Box 4 (5CD)

  スエザン・スタジオの完璧なディレクションによる、ごぞんじアタ・タック箱シリーズ第4集は、副題 "Ripening" とあるようにレーベル円熟期(1984〜1987年)の5作品。今回もピロレーター "Wunderland" とサーティーン "Can That Be True?" 、2枚のライナーノーツで関わることができ光栄の至りでございます。執筆に向けてのメール・インタビューで知られざる逸話や新情報にも触れられるすばらしい機会だった。リアルタイムではアタ・タックにだいぶ気持ちが離れていたころの、デア・プラン "Es ist Eine Fremde Und Seltsame"(紙ジャケの再現度がまた高いんだ!) とピロレーター "Traumland" の洗練と深みにも、あらためてすっかりやられたし。ふろくの珍し写真&図案集ブックレットがまた夢のよう。そうそう、スエザン・スタジオからはマウマウの "Kraft"(1982年)と未発表セカンド・アルバム(1983年)の2枚組CDという強力なしろものも出た。
   


 ☆候補に挙がり惜しくも選外となったものも4点ほど。まずは渋谷のディスク・ユニオン4階で平積みされているのをひょいっと買ったパル・ジョーイの編集CD "PAL JOEY presents Hot Music"。気軽なパッケージにイカしたトラックがぎゅぎゅっと凝縮されてごきげんだね。
  アフリカ音楽にはまるでうといけれど、ザ・モノトーンズ 'Book Of Love' のカヴァー曲に惹かれて手にとった南アフリカの1930〜1962年音源集 "Township Jive & Kwela Jazz Volume 2" は、寝ぼけ眼をほがらかに覚ましてくれる、朝いちばんの定番LPになった。
  2012年にローリー・ホロウェイ "Cumulus" を選んだ神戸はプロダクション・デシネからの再発CD、パートタイム "In Time"シャロン・フォレスター "Sharon" は、どちらも中古LPで買いそびれていただけに、いいところを突いてもらえた2枚。
 最後にシャロンのアルバムから、お気にいりのJT名曲カヴァーのYouTube動画も貼っておこうかな。
 


 新作映画のトップ10および旧作映画再上映/初上映のトップ5は、来週中にアップするつもりだよ。