例によってトップ3だけをきめて、あとはアルファベット順。タイトルうしろのカッコ内は所有しているフォーマット。それぞれに感想コメント、ジャケット(もしくはレーベル部分)写真をつけ、YouTubeやSoundCloudで聴けるものは貼っておいたゾ。
ページが重くなるので記事をふたつに分けた前編、パート1から。ひまつぶしにでもどうぞ眺めてみて頂。
☆第1位
KINDNESS / Otherness (LP+CD)
つまりはセンスと才能ってことなんだろうけど、ごくシンプルな定番ぞろいのワードローブから、スタイリッシュに着こなす能力が桁はずれって気がするんだよ。'This Is Not About Us' のボブ・ジェイムズにしても、'With You' にふっと入ってくる 'Moments In Love' にしても……とうに使い古されているはずの素材を真正面から再利用して、これほどまでに精錬されたソウル・ミュージックを生みだしちゃうんだから。ゲスト陣を適材適所にしっくり配するプロデュース力も破格だし。うっとりするほどの洒脱さと血の通う作家性をより深遠に追求して、デビュー傑作 "World, You Need A Change Of Mind"(2012年トップ30入り)すら軽々と超えちゃった。
☆第2位
NIKKI JEAN / Summertime Girl (MP3)
なんとサウンドクラウドの無料ダウンロード音源、しかもたった1曲ぶんが第2位に入っちゃった! これぞ2014年を代表するサマー・クラシック。とにかく昼夜を問わずふいに聴きたくなり、7月から9月にかけての毎日にどれだけくり返したことか……。エアコン冷房はつかわず扇風機2台でしのぐ、我が部屋の蒸し暑~い空気に、おそろしいほど一体化。瑞々しくもけだるく、気が遠くなるような、まさに夏そのもののイメージ。あまりの夏期限定仕様ゆえに、年始のいま聴いてもまるでぴんとこないほどなのだ。“あの”たまらない感覚を味わうには、来夏を待つか南半球を旅するぐらいしかないはず。ニッキ・ジーンの他の音源にはこれといったお気にいりもなく、個人的ワン・ヒット・ワンダーと呼べる永遠の夏名曲だ。
サウンドクラウド経由の女性R&B。アルバム単位では、メイラット×ジャンスポート・Jの9曲入り "Move Me"(無料ダウンロード可)が粒ぞろいで愛聴中。惜しくもトップ30には入らず。
☆第3位
MOONCHILD / Please Rewind (CD)
トーストをかじりながら毎朝チェックするサファリのブックマークのひとつ、bmrのサイト内ホットスポットの記事で発見。まだまだ底冷えのする3月下旬、すきま風吹きすさぶ中年男のハートをほんのりじんわりと温めてくれた、バンドキャンプ通販の自主制作CDだ。USCでジャズを専攻したという紅一点含む同窓生3人組のアルバム第2作。ヴィデオに映るルックスも、まだどこかあどけない令息令嬢っぽさ。いわゆるネオ・ソウルやグラスパー以降現行ジャズを志向しつつ、ずばりそのものというよりも、憧れで歩み寄っている……といった微妙な距離感が、むしろ稀有な魅力につながっているのだ。いっしょに注文した前作CD-R "Be Free"(2012年)も同路線。曲調のヴァリエイションはけっして豊富じゃないが、そのぶん統一されたやわらかなトーンが心地よく全身に浸透してくる。第2位 'Summertime Girl' が半袖の季節向きならば、こちらはふかふかのダウンジャケット、あるいはもっこもこのセーターにこそどハマりなのさ。
ここからはアルファベット順だよ。
DJ QUIK / The Midnight Life (CD)

BRYAN FERRY / Avonmore (LP+CD)

HOT16 / 1983 EP (12 inch)

THE INTERNET / Feel Good (CD)
ネット配信は大幅に先行なれど、ジャケちがいCD版は年をまたいだ2014年発売というわけでチャート入り(前作と同じこのパターン、歯がゆし)。人気実力ともに安定するOFWGTA一派でも、やはりマット・マーシャンズのプロダクションは裏切らず。そしてひたすら甘くとろけながらも、すっきりしなやかに一本芯が通るシドの歌心の不思議。2年前のデビュー傑作 "Purple Naked Ladies" に勝るとも劣らぬ、洒脱でメロウでボッサな夢見心地盤だ。
サウンドクラウドから無料ダウンロードできる約34分コンパクトな夏向きDJミックス "Hypetrak Mix: THE INTERNET - Summer" も、ふたりのカジュアルな趣味のよさをゆるり快適に楽しめたゾ。
MICHAEL JACKSON / Xscape (LP)
とにかく 'Love Never Felt So Good' にはぐっときまくった。あのデモ録音オリジナル版(指パッチン、手拍子&ポール・アンカのピアノのみの伴奏)から、よくぞふくらませたものだよ。かつてジョニー・マティスがひろいあげ吹き込んだ1984年AOR版も手がたいとはいえ、これほど心は震えないもの。ジョン・マクレイン 、ジョルジオ・タインフォート、フランク・ファン・デア・ハイデンの職人技、凄い。けっきょく手が伸びなかった "Michael"(2010年)と異なり、アルバムぜんたいの制作姿勢が的確だ。
KIMBRA / The Golden Echo (2LP)

ビルボード・ホット100的なポップ・ソングから2014年のトップ3を選ぶとするならば、MJの 'Love Never Felt So Good'、キンブラの 'Miracle'、テイラー・スウィフト 'Shake It Off' で決まり。そういえば 'Shake It Off' を最初に聴いたとき、「トニー・ベイジル 'Micky' とファレル 'Happy'、ボブ・シーガー 'Shakedown'(サビ部)が合体した曲か!」なんて、おいちゃん感心しちゃったもんな。
KIRINJI / 11 (CD+DVD)

LILACS & CHAMPAGNE / Midnight Features Vol.1: Shower Scene (12 inch)

THEOPHILUS LONDON / Lovers Holiday Ⅱ (MP3)

NAUTIC / Navy Blue (12 inch)
2012年のベスト・シングルだった7インチ 'Fresh Eyes' につづく初の12インチは、これまた高温多湿な盛夏にうってつけの清涼レイド・バック感。汗びちゃのTシャツを着替えるタイミングなどに、ふと針を落としてほっとひと息ついたものさ。秋口に出たもう1枚、'Freedom Of The Floor' のリミックス12インチには、ウォマック&ウォマックの1988年大名曲 'MPB (MIssin' Persons Bureau)' の好カヴァー版も入り、うだる残暑に快い風をふわりと届けてくれたんだわさ。
MY BUBBA / Goes Abroader (LP)
寡聞にして知らなかったアイスランドとスウェーデン出身の女性カントリー・デュオ、マイ・ババ&ミーが名前をちょい短縮してのアルバム第2作(2010年にデビュー作 "How It's Done In Italy" が出ている)。バンジョーとダブル・ベースの弾き語りというフットワークの軽さもあって、欧米各地を飛びまわり、ついにはカリフォルニアでスタジオ入りした成果がこれなんだって。制作は、なるほどデヴェンドラ・バンハートも手がけるノア・ジョージスン。そういや11月に『白夜のタンゴ』(ヴィヴィアン・ブルーメンシェイン監督)なるフィンランドのタンゴのドキュメンタリー映画を観たけどさ、この北欧のカントリーにもどこか似たようなの~んびりした気風があって、やけに和んじゃうんだな。
ONCE & FUTURE BAND / Brain (12 inch EP)
いつぞや、ネット・サーフィン(←カッコいい言葉)中にA面2曲めの 'Destroy Me' を一聴して、90年代半ばに初めてデイヴ・シンクレアがらみの名曲群('Wanderlust' とか 'O Caroline' とかさ)に触れたときみたく、なんとも儚げでせつない気分がこみあげたんだな。しっかり仕様の見開きジャケもそそる、カリフォルニアはオークランドを拠点とするサイケデリック・トリオの4曲入りデビュー・EP。もう1曲のスロウ・テンポ 'The Old Brain' だけじゃなく、変拍子をきめまくるスモーキーな2曲(ちょいイエス的)もじつにイカす。プログレッシヴでありながら、ポップな素養も豊富なようすで、メンバー出演YouTube動画の、24秒あたりから流れる謎の曲がこれまた気になる。いい顔ぞろいだし、生のステージも観てみたいね。
☆パート2(後編)→"BABY RECORDS 2014 FAVES TOP 30 - Part 2"につづく。