2015年1月1日木曜日

BABY RECORDS' 2014 FAVES TOP 30 - Part 2

 2014年お気にいり盤トップ30の後編、パート2だよ。
 パート1はこちら→ BABY RECORDS 2014 FAVES TOP 30 - Part 1


 THE PAINS OF BEING PURE AT HEART / Days Of Abandon (LP)

 かつてあまりに青くさいバンド名に腰がひけて以来、敬遠していたのを反省。気まぐれでジャケに惹かれて試してみりゃ、すぐれて正統派の英国風アコースティック・ギター・バンドで、いわばOBのおいちゃんも愛聴し始めたしだい。なかでも 'Masokissed' は懐かしいよな恥ずかしいよな珠玉の1曲で、いまやミンクスの 'Funeral Song'(2010年)と並ぶ、2010年代クラシックスの仲間いりを果たしたわけさ。




PHISH / Fuego (CD)

 さほど熱心なファン(Phan)というわけじゃないけれど、20年来のお気にいりバンドにはちがいなし。CD発売前にYouTube公開された 'Waiting All Night' が、小春日和にぴったしなんてもんじゃない最高のゆるレゲエで、タワーレコード渋谷店5階の試聴機に並ぶやいなや即入手。ジャケのオレンジ色によく似合う、奇をてらわず大らかで温かな南部録音。それでいてあくまで中道な耳心地は、やはりボブ・エズリンのバランス感覚かな。そうそう、ラス・ヴェガスのハロウィーン・ショウのインターネット生中継は、ちょっとのつもりが目を離せなくなり、その晩のDJ用レコード選びにしわ寄せが……。むちゃくちゃ焦る非常事態となった。




PHOTAY / Photay (12 inch)

 例年はフォーマットぜんたいでぐっとくる度合いが高いものを優先したが、2014年は1曲だけ突出して他はまずまずといった場合も年間チャートの対象と、自由度をあげてみた。これもそんな1枚。ソウル心やファンク心、はたまたAOR心をダブステップ周辺にも求める昨年までのモードが収束に向うなか、唯一といってよいほどぐっときたのが、ニューヨーク州ウッドストックの若者フォーテイの 'Reconstruct feat. SEAFLOOR'(もじゃもじゃ頭ジャケの6曲入り12インチより)。折り重なるむにょむにょシンセに裏声歌唱、そして終盤のトランペット・ソロで決まり。この他にピンポイントで聴きまくった12インチEP曲では、クリスチャン・リッチ "SS14" 収録の 'Real Love feat. ANGELA McCLUSKY' も、ブラコン心をくすぐる熱帯夜向きスロウ・ジャムで忘れがたし。




ARIEL PINK / Pom Pom (CD)

 R・スティーヴィ・ムーアに薫陶をうけていたと思ったら、今度は病床のキム・フォウリー御大との共作曲で幕開けとは……これぞ宅録アウトサイダーの心意気。ひたすら小憎らしくもあらがえぬ魔力に満ちた、真性カリフォルニアン・ポップ変異体。あるいは、バブルガム・サイケデリアの精髄なのだ。猫の目のごとき多彩な全17曲を貫く、シド・バレット的なピーター・パン感覚こそが鍵だね。
  バレットといえば、フォロワー英国代表ロビン・ヒッチコックの新作 "The Man Upstairs" も、ザ・サイケデリック・ファーズ 'The Ghost In You' やロクシー・ミュージック 'To Turn You On' のカヴァー選曲だけでひいきにしちゃう、清冽なSSW皿(うれしいLP+CD仕様)だった。




PRINCE / Art Official Age (CD / 2LP)

 インターネット配信シングル 'Breakfast Can Wait'(2013年チャート入り)には復調感ひしひしだったけど、それどころじゃない絶好調期に突入でしょ。あらためてディスコグラフィを眺めても、ここまで充実度を覚えたのは "The Rainbow Children"(2001年)以来って気がするし。どあたまのEDMっぽさすら、ずれた悪乗りには映らず、余裕のウォーミング・アップに感じちゃう。第5曲 'U Know' でミラ・J嬢の 'Blinded' (収録の無料ミックステープ "Westside" もなかなかだ) を全面サンプリングしたのは、殿下のいつものラヴコールとみた。




PRINCE & THIRDEYEGIRL / Plectrumelectrum (CD / LP)

 でまあ、その好調っては、やはりサードアイガールとギグを重ねた充足感に負うにちがいなく。なんだか若がえっているし楽しそうだし、ちょっとうらやましいほどの現状がそっくりそのままアルバム化された、同時発売のこちらも爽快。文句なし。2枚で 'Funknroll' の聴きくらべができるのも愉し。
  バンドと連名の大物盤といえば、CD入手したてのディアンジェロ&ザ・ヴァンガード "Black Messiah"。「もしや滑り込みチャート入りか?」と思いきや、綻びなき模範解答を示されたようで、素直に喜べなくってさ。とっくに切らした痺れの血行を巡らせるまでに至らず。




ANGELIQUE SABRINA / Right Now (AAC)

 こりゃまた第2位のニッキ・ジーンとほぼ同じパターン。曲単位でダウンロード(こちらは購入)した女性R&B歌手のスロウ・ジャム、しかも暑い盛りにサウンドトラック化したワン・ヒット・ワンダーという点も共通する。ただし昼夜問わずのニッキと異なり、夕暮れどきからひっそりと効力を発揮してくれた、バハマはナッソー生まれのアンジェリークちゃん。故アリーヤばりに若年デビューした16歳で、このムードを醸しだすとはなかなか。半袖短パンの季節が恋しくなる、波の音入りサマー・クラシック・2014だ。




LAETITIA SADIER / Something Shines (LP)

 レティシアのソロ活動はとくに追っていなかったので、我ながら意外な最新第3作のトップ30入りだ。ただ、ラジオでひさびさにかかったステレオラブの 'Cybele's Reverie' (1996年) にえらく感心したという再評価の伏線あり。その流れで新曲 'Release From The Centre Of Your Heart' のヴィデオを観たら、お香のごときほのかな70年代ニュー・ソウル風味と、かつてレコード屋の店番で飽きるほど浴びたあの歌声のとり合わせが、ずいぶん新鮮でさ。90年代との距離感がほどよいということもあるし、ザ・ハイ・ラマズがそうであるように、時流に流されず深めてきたスタイルに説得力がある。随所にアイディアと技をちりばめた、快適ソフト・サイケデリアの秀作なり。




MOSES SAMNEY / Mid-City Island (WAV)

 お皿にならずお店にも売っていない、サウンドクラウド経由の無料ダウンロード音源がまたしても。弱冠24歳のLA在住フォーキー・ソウルマン、モーゼスくんの5曲入りEPだ。アコースティック・ギターの響きぐあいと、やわらかく伸びやかな美声の重なりには、日々の胸のつかえがほろほろとほぐれていくよう。Vimeoで観たライヴ映像のアフロな活気にも驚いていたら、どうやら家族でガーナに越していた時期があるそうな。この瑞々しき才能はぜひとも生で体感したい! 祈、来日。




MICHELLE SHAPROW / Earth One (CD)

 11月半ばの日曜夕刻、聴くでもなく流していたインターFMの『LHR ロンドン・ヒット・レイディオ』でかかった 'Lost In The Stars Again' にびっくり。渋谷のタワーレコード6階で見かけたジャケの印象では想いもよらなかった、エクレクティックかつエクセントリックなポップ職人ぶり。我が両目(老眼進行中)の節穴ぶりをまたしても思い知らされた、LAを拠点とする才色兼備SSWの第2作だ。宇宙船内ラジオ局から地球に向け発信するというコンセプト・アルバムじたては、実質上ムーンチャイルドと同着3位といえるほどのすばらしさ。至福かつ圧巻の60分間だよ。




失敗しない生き方 / 常夜灯 (CD)

 「♪やっぱーりねっ、そうっさ~」のフレーズはすっかり定番。ふとしたタイミングに鼻歌で出てくるんだよね(笑)。地元が三鷹ゆえにシティならぬ“ベッドタウンポップ”を標榜する、若き6人組のデビュー・アルバム。ときにチャーミングに弾み、ときにメロウに滲む、住宅街育ちの卓越した情景描写。そしてグッドタイム・ミュージック一歩手前で混沌に飛びこむアンファン・テリブルぶり。危うい演奏力すらもありのままの魅力へとつなげる感性も、クレヴァーで鋭い。生のステージを拝みたいのはやまやまだが、くたびれた中年がヤングのシーンに紛れこむのもどうかと躊躇し、いまだ果たせず……。




GERAINT WATKINS / Moustique (LP)

 出会いは、なんと1匹の蚊が自己紹介するイージーなボッサ曲 'Mosquito'。9月いっぱいで終わっちゃったインターFMの朝番組『バラカン・モーニング』で、春先に流れたのだ。前年の10インチ盤 "Mosquito Vol.2" にも入っているが、どうせならばと入手した2014年のフル・アルバム。いかにもパブ・ロック畑の裏方鍵盤奏者のリーダー作といった地味渋スタイルながら、意外や彩り豊かなポップ・マインドが愉し。ヘタうまな歌もご愛嬌。いわば“和みのブレイン・ドレイン”だね。




BEN WATT / Hendra (CD)

 EBTG期にリードで歌った名曲は多いし、2000年代にソロ名義で連発した12インチも忘れちゃいけないけれど、SSWのスタイルに回帰したフル・アルバムとくればねえ。31年をへたこのタイミングで続編をふっと差し出す自然な物腰が、ベン師匠らしくもあり。11月27日の渋谷クラブクアトロ公演がまたすばらしくてね。想い出の名曲はもちろんのこと、ここからのレパートリーの力感ある演奏ぶりに惚れなおしたよ。相棒バーナード・バトラー(さすがは元スウェードな優男)の確かなギターワークにも感服。




WE ARE DESTINO / Mind Force (12 inch)

 ダンスフロアの滞在時間と比例するように、機能的なハウス皿を欲する気持ちもめっきり減ってきた今日このごろ。ちょくちょくつまみ食いだけはしたなかで、大好物のラー・バンド心を満たしてくれたのが、カリフォルニア産甘口バレアリック・ブギーの新名曲。デーテ嬢のすっきり素直な歌声も、どこかRAHの嫁な面影あるでしょ。ブレナン・グリーン手がけたB面リミックス2種も上出来とはいえ、やはりA面のオリジナルおよびインスト版がきらりと光る。ウィ・アー・デスティーノこと西海岸 ディープ/ニュー・ディスコ界隈の鍵盤達人ダン・ハスティが、好調アダルト・コンテンポラリーから放ったスマッシュ・ヒットだ。




WHITE DENIM / A Place To Start - JAMIE LIDELL Remix (7 inch)

 未来派ソウルフルな "Jamie Lidell"(2013年トップ30入り)の記憶がまだ新しいというのに、ジェイミー狂としてはうれしいかぎり。2014年は客演仕事を中心に自慢の喉をふるわせてくれた。ジェッツとのミッドナイト・スター名曲カヴァーもさすがの一発だったが、リミックス版と銘打ちつつも実質的にはワイト・デニムのカヴァー・シングルという、レコード・ストア・デイ限定7インチが印象ぶかし。ちょいウルトラヴォックス 'Vienna' っぽいドラム・パターンがたまらない。
  レコード屋の日に合わせて出た7インチでは、シャルロットの 'Hey Joe'(映画、しょうもなかった……。第1部はまだ笑えたけどさ)や、ティム・バージェスの 'Oh Men'(共作にラムチョップのカート・ワグナー。サックスの響きがよし) も気がきいていたね。





☆ナイト・ジュエルの 'What Did He Say' やウォッシュト・アウトの 'Feel It All Around' 、あるいはデイム・ファンクの初シングルB面曲 'Galactic Fun' といった、2000年代末のエポックメイキングな名曲群の静かな衝撃から5年も経つというのに、我が趣味趣向に目立つ変化は訪れず、すっかり焼きが回ったと思うこともしばしば。ところがここにきて、ようやく次なる兆しをつかめてきたような……。今年こそはなにか自分にとっての重要な動きに期待している。2010年代半ばの新しいポピュラー音楽は、はっきりいってかなり好きだな。


 すでに順位は決めてある再発盤/発掘音源盤のトップ10と、新作映画のトップ10および旧作映画再上映/初上映のトップ5は、近日追って発表していくよ。